海外旅行で神の怒りに触れて死を覚悟した日

私がスパルタ教育で有名なスパルタの町に着いた日は「曇り時々晴れ」という天気でした。この町の中心部から歩いてすぐのところにある小高い丘の上に、古代の王宮と劇場の跡が残っています。ギリシャ人でさえも「見るほどのものではない」と言うこの遺跡が私の旅の目的でした。
さて私が遺跡のある丘に足を踏み入れた頃から空模様はあやしくなり、ぽつぽつと雨が降り始めました。冬のギリシャで雨が降るのは当然ですから、私は傘をさしてゆるやかな坂道をのぼっていきました。
しかし雨はしだいに激しくなり、丘の頂上にある王宮遺跡に到着した時にはバケツを引っくり返したようなものすごい豪雨でした。地面一面が水浸しで、靴もぬれていきました。雨があまりにもひどいので、私は近くにあった木の下へ避難しました。もちろん木の下で傘をさしていてもズボンまでぬれましたが。
しばらくすると今度は冬だというのに雷がなり始めました。その遺跡のある丘は町で1番高い場所にありました。私は降り続く大雨と、怒ったような音を出す雷におびえました。
雷は動く物や金属に落ちるといいますが、その辺りで1番高い動く金属というのが私の傘と腕時計だったのです。もしどちらかに雷が落ちれば、体が雨にぬれていたので感電死したかもしれません。
「もしかしたら、わたし死ぬかも…。」
私は死を覚悟しました。
恐怖におびえて耐えていると雷はおさまり、雨も小降りになりました。このチャンスを逃すまいと私は走って丘を降りました。ゆっくり見たかった遺跡でしたが、また大雨が降ってきては困ります。
私がホテルに戻る頃には雨はやんで日が差していました。先ほどまでの豪雨と雷が信じられないほどでした。
次の日雨が降っていないことを確かめて、私はもう1度遺跡に向かいました。豊かな伝説を残す古代の町を見ておきたかったのです。しかし遺跡にたどり着くとまた雨が降り始めました。昨日と同じことが起きては大変なので、私はさっさと写真を撮り、逃げるように遺跡のある丘を駆け下りました。すると空が晴れてきて…。
どうやら私は神の怒りに触れたようです。私がこの遺跡に足を踏み入れることは許されていないのだと感じました。